建築基準法第12条に基づく定期報告制度について
財団法人 大阪建築防災センター
業務部長 大西康之
【定期報告制度の概要】
 みなさん、建築基準法という法律をご存知でしょうか。ほとんどの方がご存じだと思いますが、みなさんが管理また居住されているマンション(集合住宅)は、建築基準法の中では共同住宅という用途に分類され、多数の人々が利用し居住する特殊建築物として様々な設計基準に基づいて設計・施工されております。そして当初必要とされる安全性等の性能が担保された上で使用が開始されております。
 当然のことですが、その後の使用に伴い機能不良や経年劣化・損傷による性能の低下が発生します。建築基準法(以下 法)第8条には「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」と示されております。そして法第12条には「・・・国土交通省令で定めるところにより、定期に、・・・資格を有する者に調査をさせ、その結果を特定行政庁に報告しなければならない」とあります。この法第12条が定期報告制度の法的根拠となっております。ぜひとも建築基準法をご確認いただきたくお願いします。
 端的に言いますと、共同住宅が完成した後は、維持保全に努め状況を定期に調査・報告しなければならないという責務が所有者・管理者にあるということです。当然ながら、当該制度にも報告義務違反・虚偽報告に対する罰則(法第101条)は存在しますが、所有者等が建築防災という観点について常に配慮を行わなければならないという意識を持ちながら、積極的な姿勢で維持保全を行うことこそが第一義に求められるのであって、罰則があるからということで義務的に定期報告が行われることは制度が本来求めていることではございません。
 法律に基づく制度である以上どうしても上記のような説明となりますが、許可や申請と違い報告制度であるということ、すなわちみなさんの自主的な管理・維持保全意識により建築物の現状把握をみなさんが行うというところにこの制度の意義と役割があることを十分ご理解いただきたくお願いいたします。
 そしてさらに後ほど触れますが、定期報告で実施した調査結果をみなさまの管理に役立てていただくことがこの制度を生かすポイントになってきます。

【共同住宅の定期調査】
 ここで簡単に共同住宅の場合の調査について紹介させていただきます。
法第12条に「国土交通省令で定める」と示されていると前述いたしましたが、調査の項目、方法、判定基準が平成20年国土交通省告示282号~285号に示されており、今年の4月1日に大幅に改正されたところです。
大阪府内の共同住宅の場合、告示282号の建築物調査を3年に1回(当たり年があり共同住宅は、平成21、平成24・・・となります。)、非常用のエレベーターが設置されている高層マンションの場合のみ告示285号の建築設備検査(堺市と池田市は除く)を毎年1回実施し報告しなければなりません。
 建築物調査の内容は、書類や図面の保管・整備状況から現地目視調査、作動調査、外壁タイルの打診調査、吹き付け石綿の有無調査、各劣化損傷状況調査など最大で144項目にも及びます。建築設備検査は、機械換気設備・機械排煙設備・非常用の照明装置の状況と能力チェックが必要で風量測定や作動・点灯試験等も含まれており、メンテナンス記録等の書類や図面の保管・整備状況も同じく含まれております。
 詳しくは財団法人 大阪建築防災センターのホームページ(国土交通省の告示のリンク含む)にてご確認ください。http://www.okbc.or.jp/

【マンション管理業務につながる定期調査の実務】
 法的な解説での制度説明が長くなりましたが、ここでみなさまが一番関心を持たれるであろう実務の内容についてお話いたします。私が調査者として共同住宅の調査依頼を受けたという形で進めます。
私の場合まず、依頼を受けましたら建築物の概要をヒアリングしまたは必要に応じて現地の下見をいたします。
 その時に一番気をつけることは、関係図書が整っているかということです。関係図書には、建築確認申請書の副本が特に重要ですが、竣工図や管理図、メンテナンス記録、消防点検記録等を参照しなければ建築物の情報が把握できず、それらが整っているかどうかで調査の進め方が大きく変わります。もし整っていなければ、情報把握の為の作業がまず必要となりますので、その時点での状況を所有者・管理者様にお伝えする必要があります。
 そして、事前に机上での建築物の状況把握と現地調査の手順や着目点をピックアップし、記録用の図面や用紙を準備の上所有者・管理者様と費用面や日時を含め協議を行います。
 そしてようやく現地調査ということになります。現地では、通常は敷地・地盤の状況→建築物の外部の状況→屋上・屋根の状況→建築物の内部・避難施設等の状況といった手順で目視調査を中心に写真撮影を含め進めていきます。現実には、再確認のため何回か手順を逆戻りすることも多々あります。
共同住宅の場合は外壁の劣化・損傷状況が注目されるところとなり、特に今年平成20年4月に改正された調査内容ではタイル・モルタル仕上げの場合、打診調査にて確認が必要となっております。打診調査は、打診棒という道具を使ってタイル面等を軽く叩いたり、撫ぜたりしてその打診音や感触でタイル等の浮や劣化状況を調査していきます。また防火設備(防火戸・防火シャッター)では性能や作動及び挟まれた場合に危害を及ぼさないかの安全性の確認も調査項目となっており、現地で動作を伴う作業も必要となってきます。
 鉄骨造の場合では特に耐火被覆として岩綿吹き付けを施されている場合が多いですが、吹き付け材に石綿が含有されていないか(重量で0.1%未満)というチェックも調査項目にあり、精密分析をかけないと明確に判定できないことになります。それ以外にも、建築基準法に適合しているかという法チェック項目や各部の劣化損傷状況の程度判断を行う項目もたくさんあります。
 以上のように多種多様な建築物を法的なチェック、性能・作動チェック、劣化損傷チェックなど様々な項目について調査し、建築物の現状を総合的にレポートしていくことになります。
 現実には資料や情報が少ない場合や隠ぺい部など確認ができない部分があったり、費用面を含めた事情で調査が困難な場合も考えられます。調査資格者として、そのような制約条件の中で調査建築物にとってどのような調査内容で実施し報告するのが所有者・管理者に対して適切なのかをとりまとめることが大変重要で洞察力のいるところであります。
 そして、報告書(書式あり)にまとめます。報告書は、建築物の基本情報の記述と、関係図書の管理状況やヒアリングによる状況、調査項目に応じた結果判定(チェックリスト式になっている)、特記事項、添付図面・写真・資料という形でA4の書類に綴じこみます。特に私が重要視しているのは特記事項と図面・写真です。なぜかというと、所有者・管理者様に報告する際に調査で確認し伝えたい内容が表現できるのが特記事項であり、それをわかりやすくするのが写真と図面であるからです。
 報告書がまとまり、所有者・管理者様への説明の後に押印をいただいて特定行政庁への報告提出となります。大阪府内では財団法人 大阪建築防災センターが受付窓口を行政からの委託により行っており、定期報告についての質疑応答やアドバイス・相談も承っております。
受付が完了しますと特定行政庁の審査指導があり手続きは完了します。
【最後に】
 報告手続きが完了し報告義務を果たしたこととなりますが、その後の維持管理や改善計画に如何につなげていくかは所有者・管理者様の姿勢にかかっております。他の詳細な調査(例えば外壁の劣化診断や耐震診断)に至るご判断や中長期維持管理費の予算計画、優先順位づけなど管理者の実務は様々でございますが、その前段の総合的な判断材料として定期報告を役立てていただくことが価値ある調査となることでしょう。
 一方で、まだまだ所有者・管理者様のご意見やお声をお聞きし実務に反映していかなければならないのが定期報告制度の現状でもあります。ご意見をお聞きする機会にはみなさまにご支援をいただきたくお願いいたします。
 これでレポートを終わります。ありがとうございました。
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