栴檀の木のはなし(後編)

しかし、これほどの栴檀の大木を切って捨てるのはやはり心苦しいし、結構な費用も掛かります。

そこで木ではなく、コンクリートを切ることになりました。

自転車置場の床のコンクリートを撤去すると、すぐに太い根が出てきました。

その断面はなんと!半円になっていました。長年コンクリートに押さえつけられていたからです。

太くて地上に近い根を中心に、幅50㎝程はコンクリートにせず、土のままにしてリュウノヒゲを植えました。

自転車が停めやすくなったとはいえませんが、こうなってからは誰も文句を言わなくなりました。

根っこのルートをつくってもらった栴檀の木は、これからもここで、

たぶん今までよりも幸せにみんなと暮らすことができる、そんな気がします。

栴檀の木のおはなし、おしまい。(Oh)

栴檀の木のはなし

ある日、栴檀の木の根元に駐輪場が造られました。

20年くらい経って栴檀は大木となり、その根が駐輪場の床コンクリートを持ち上げ、コンクリートはひび割れ、床が傾いて自転車がうまく止められなくなりました。

自転車を止めている人たちは「この木を切ってしまえ!」と言いました。

栴檀の木はドキドキしながら、でも静かに、自分の運命を委ねるしかありませんでした。

(つづく)